運命。   

2006年 04月 03日

雨が降ったせいか、川が氾濫している。

黄土色の土、それはまさに粘土だ。

その土手には、草一本たりとも生えていない。

土手はどこまでも黄土色をしている。

雨はまだ降っているのか、はたまた止んでいるのか…いずれにしてもどんよりした空には変わりない。

まっ茶色な水が生き物のようにうねりをあげて流れているにも関わらず、その水の音は全く聞こえない。

聞こえてくるのは、賑やかなお祭りの音。

振り返ると、神社の境内に続く道なのか、商店街の一角なのか、出店が並び、提灯の明かりが点々としている。


あたしは、ちょっとだけ高い、粘土の土手に立っていた。


激流の向こうには、同じ黄土色の土手が見える。

そして、あたしの前にはここと、向こうの土手を結ぶべく、全く同じ黄土色の粘土の細い道がある。

言わば橋だ。

しかし、多くを見積もっても橋には見えない。

その幅は狭く、相変わらず草一本たりとも生えていない、ヌルリとした道。

その道から離れた場所からは向こうの土手は見えるのに、道伝いに見ると、途中から靄がかかっていて、向こうが見えない。


あたしは何の迷いもなく、その粘土で出来た橋を歩き出した。


歩き出してすぐだったのか、半ば辺りにだったのかはわからないが、道の端に川を背にして、市民会館の会議室にあるようなパイプ椅子に座っている男の人がいる。


数年前に他界した、母方の祖父だ。


あたしは祖父に気付いたが、祖父はあたしに気付いているのだろうか?
こちらを見る事も無く、座っている。

あたしも何も無いかのように、そのまま歩いた。


あたしが祖父の前を通り掛かかろうとした時、祖父は静かなトーンであたしの名を呼んだ。
そして、

『そっちに行っちゃダメだよ。』

と。


パイプ椅子から立ち上がって言うわけでも、叫んで言ったわけでもない。
喋り口調のまま。

あたしは不思議がる事も、聞き返す事も無く、『そうなんだ…』と素直に元の土手へと引き返した。

そして、粘土の土手からも降り、お祭りの人込みの中へと向かった。


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夢です。

信じる信じないは人それぞれ。

でも、あたしは思います。

多分あたしは死にかけていたんでしょう。



辛い事ばかりでも、毎日はやってくるのです。
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